ERPベンダーからの情報収集

ERPベンダーや保守パートナーから情報提供を依頼するケースとしては、
1.現在利用しているERPの機能改善や機能追加を計画・依頼する場合
2.現在利用しているERPのバージョンアップを計画する場合
3.現在利用しているERPのリプレースを計画する場合
があると思います。


このうち現在利用しているERPの機能改善・追加、およびバージョンアップに関する情報提供は、現在契約しているERPベンダーや保守パートナーに相談することが一般的です。
これらの作業では、現在のERPの利用方法を熟知していることが必要なため、現在契約しているERPベンダー、保守パートナーに相談するのが合理的です。


一方、ERPのリプレースにおいては、現在は利用していない他のERPや導入パートナーを利用する選択肢が考えられるため、複数のERPベンダ、導入パートナーにコンタクトをする必要があります。
しかし多くの企業では、初回のERP導入から20年近くが経過し、ERP選定の当時の担当者が離職や定年退職して、複数のERPを評価できる経験者が不在となっています。

この動画では、こうした複数のERPベンダーからの情報収集の進め方について解説します。

まず、ERPベンダーからの情報収集時の留意点を説明します。

情報収集に当たっては、ERPベンダーと導入パートナーの双方から情報を収集します。順序としては、まずERPベンダーから情報を収集し、次に導入パートナーから情報を収集します。
先にERPベンダーから情報を提供してもらい、そこで導入パートナーに関する情報も提供していただくことで、ERPベンダーからも信頼されている、自社に適したパートナーに対して、情報提供を依頼できるようになります。

そして信頼できるコンタクトパーソンにコンタクトして、情報提供を依頼します。これまでにコンタクトを受けている担当者がいればその方にコンタクトしてもよいですし、会社以外のつながりで面識のあるERPベンダーの社員でもよいと思います。
そうしたコンタクトパーソンがいなければ、ERPベンダーのホームページのコンタクト先にコンタクトします。
コンタクトに対するレスポンスが非常に遅いERPベンダーもありますが、そうした場合には電話やメールで根気よく督促する必要があります。

コンタクトパーソンが決まったら、情報提供依頼の背景を口頭で説明したうえで、機密保持契約を締結します。機密保持契約前にTeamsでの画面共有も含めて文書を開示するとどこに出回るかわかりませんので、文書の開示前に必ず、機密保持契約を締結してください。

機密保持契約が締結出来たら、RFI、Request for Informationを提示します。RFIの作成方法については次ページ以降で解説します。

そしてRFIでは見積は取得しません。RFIの回答を評価し、次のステップである「提案書作成」の依頼先を絞ったうえで、見積りに必要な情報を開示して、見積もりを取得します。

つぎにRFIでERPに開示する情報について説明します。

RFIではまず初めに、自社の紹介をします。そのうえで、ERPを更新する目的を記載します。システムの老朽化への対応や、事業環境の変化への対応といった目的を記載しますが、ここで記載する目的が、社内の役員会にそのままの内容で上申できるようになっていることが望ましいといえます。

その次にERPで実現する機能範囲を記載します。機能範囲とは、会計、販売管理、購買管理、生産計画、生産実行管理、原価管理、固定資産管理、など、ERPベンダーが理解できる表現で記載する必要があります。

またERPをどの事業所、関連会社に導入するかも明示します。ERPベンダーではこの情報に基づいて、プロジェクトの規模感を把握するとともに、自社のERPで提案可能かを判断します。ERPによっては複数事業所や複数会社への導入を想定していないパッケージもあり、その場合にはRFIへの回答を辞退されることとなります。

ERPとのデータ連携が必要となる周辺システムも明示します。受注前の商談を管理するCRM, 図面や設計情報を管理するPDMは、一般的にはERPの機能範囲には含めずに、ERPとデータ連携するためのインターフェースを開発します。この段階では、データ連携が必要となるすべてのシステムをリストアップする必要はありませんが、CRMやPDMのようにERPと密接に連携することが必要なシステムについては、RFIでも明示しておく必要があります。

RFIには自社で想定しているスケジュール案も記載します。RFIは情報収集を目的とするため、ERPベンダーとスケジュールの議論までは行いませんが、スケジュール案を明示したほうがERPベンダーは積極的に回答してくれます。

RFIの最後のページには、自社の担当者の連絡先を記載します。

前ページに記載した自社の情報をRFIで開示したうえで、ERPベンダーに対して回答と情報提供を依頼します。

これまでご説明した通り、RFIではERPを更新する目的と機能範囲を開示します。

ERPベンダーには、その機能範囲においてERPを更新する目的を達成するための、ソリューションの情報提供を依頼します。ERPを複数有するERPベンダーであればどのERPを提案するか、業種別のソリューションを有するERPベンダーであればどのソリューションを提案するか、といったハイレベルの回答を、この質問では期待しています。

次にそのERP、ソリューションを導入するための方法論についての情報提供を依頼します。大手のERPベンダーは、自社のERPを導入するときの標準的な作業ステップを「導入方法論」として定義しています。ERPを実際に導入するのはERPベンダーではなく導入パートナーなので、導入方法論は導入パートナーにも確認する必要がありますが、ERPベンダーとして定義している方法論も把握しておきます。

先ほども触れましたが、ERPベンダーに導入パートナーの情報を提供していただくことも非常に重要です。
最近は人材不足で、大手のシステムインテグレータとERP更新の契約を結ぶことは難しい状況となっています。そのためERPベンダーからは、それほど有名でなくても自社のERPを責任をもって導入してくれる導入パートナーを紹介していただくことが有効です。ERPベンダーにとっても、自社のERPを導入してくれる導入パートナーがいなければライセンスも売れませんので、積極的に紹介してくれます。

現在利用しているERPから新しいERPへのデータ移行の方法についても情報提供を依頼します。ERPを更新するには多くのマスタや受注残、発注残のデータ移行が必要です。ライセンスを販売するだけでなく、稼働まで責任をもって伴走してくれるERPベンダーであれば、データの移行方法についてもソリューションや情報を提供してくれます。

前述のCRMやPDMをはじめとして、周辺システムとのデータ連携についてのソリューションについても回答を依頼します。自社でソリューションを持っているERPベンダーと、他社製品を紹介するERPベンダーに分かれると思います。

ライセンス形態を確認します。ユーザー数に基準か伝票数基準か、会社の規模によるかなど、どういう要素がライセンス費用に関連するかを把握します。ただしRFIの段階では、見積までは取得しません。
この段階では見積もりを取得せず、提案依頼を行う段階で、具体的な要件を提示した状況で見積もりを取得するほうが、ライセンス費用の交渉が有利に進められると思います。

それではまとめにはいります。

ERPの更新時におけるERPベンダーからの情報収集では、
1.ERP更新の目的と機能範囲、スケジュール案を自社で討議し、RFIを作成します。
2.数社のERPベンダーにRFIを提示して、回答してもらう。
3.RFIの回答を評価し、さらに詳細な情報を収集するERPを2,3社に絞る。
4.RFIでは見積は取らない。
ことがポイントになります。

またRFIによる情報収集では、
1.機密保持契約を締結する。
2.信頼できるコンタクトパーソンに依頼する。
3.導入パートナー候補を紹介してもらう。
ことに留意します。

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